
名前がよく似ている「品質管理」と「品質保証」ですが、その違いを明確に理解している方は意外と少ないかもしれません。この記事では、それぞれの役割や違いをわかりやすく解説します。また、両者に共通する課題や製品の品質を向上させるために取り組める具体策についても紹介します。品質管理や品質保証に課題を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
品質管理・品質保証それぞれの違い
「品質管理」と「品質保証」は似た名称をもつため、違いがあいまいなまま使われていることも少なくありません。ここでは、それぞれの役割や違いについてわかりやすく解説します。品質管理とは
品質管理とは、製品やサービスの製造過程で品質を検査・監視し、不適合品の発生を未然に防ぐためのプロセスです。製造されたものが常に一定の品質基準を満たしているかを確認するため、検査・検証・監視が行われます。とくに、精密機器や医薬品、食品などの分野では、品質管理の不備が重大なトラブルにつながるため、非常に重要な工程といえます。品質管理は、主に工程管理・品質検証・品質改善の3つの要素で構成されています。
品質保証とは
品質保証とは、完成した製品やサービスがあらかじめ定められた品質基準を満たしていることを確認し、それを対外的に保証するプロセスです。品質保証には、納品後のアフターサポートなども含まれ、顧客からの信頼確保にも大きく関わります。それぞれの違い
品質管理の主な対応範囲は「製造工程から出荷まで」です。一方、品質保証は「製造〜出荷」に加えて、「納品後のサポート」までを含むため、品質管理よりも広範囲をカバーしている点が特徴です。両者は密接に関わっていますが、目的や対象が異なるため、正しく理解して使い分けることが重要です。品質管理・品質保証の双方に共通する課題
品質管理と品質保証には、それぞれ異なる役割がありますが、共通して抱える課題も存在します。代表的なものとして、人手不足と業務の属人化が挙げられます。人手不足
製造業を志望する人材は年々減少しており、現場では従業員の高齢化が進んでいます。その結果、品質管理や品質保証に十分なリソースを確保できない企業が増えているのが現状です。今後さらに人手不足が深刻化すれば、品質維持の取り組み自体が困難になる可能性もあります。現在は人員が確保できている場合でも、将来的なリスクに備えた対策を講じておくことが重要です。人手不足は、安定的かつ継続的な品質管理・品質保証を行う上で、避けて通れない課題といえるでしょう。
業務が属人化する
もうひとつの課題は、業務の属人化です。属人化とは、ある業務の進め方やノウハウが特定の担当者しか把握しておらず、その人に依存した状態を指します。このような状態では、担当者が急に退職・休職した場合に、業務の停滞や品質の低下を招くリスクが高まります。特にマニュアル整備が不十分な職場で起こりやすく、属人化の解消には業務の可視化と標準化が不可欠です。
製品の品質向上のためにできることを紹介
ここでは、製品やサービスの品質を高めるために取り組める具体策を紹介します。主なポイントは、課題の整理・マニュアル化・業務標準化の3つです。抱えている課題を整理する
品質向上に取り組む前に、まず現在の課題を明確にすることが重要です。品質が安定しない原因がどこにあるのか、業務フローや過去のトラブルなどを洗い出し、整理してみましょう。やみくもに改善策を講じるよりも、事前に課題を把握したうえで対策を講じるほうが、効率的に品質向上を図ることができます。
マニュアル化を行う
製造工程の品質を安定させるには、業務手順を文書化するマニュアル化が欠かせません。作業のやり方を明文化しておくことで、担当者が異動や退職をしても業務が滞らず、一定の品質を保ちやすくなります。現在、担当者ごとの経験や勘に頼っている部分が多い場合は、できるだけ早くマニュアル化に着手することをおすすめします。
業務標準化を行う
マニュアル化に加えて、業務のやり方を統一する業務標準化も品質向上に効果的です。作業ごとの手順や判断基準を全員で共有することで、従業員のスキルや経験に関わらず、製品品質のばらつきを防ぐことができます。標準化を進めるには、業務の可視化・定量化から始め、課題の特定、改善の実践、運用の定着といったプロセスを段階的に進めていくことが大切です。