
設備や製造品を検査する際、内部まで確認することが重要です。しかし、検査物が解体不可能な場合もあります。そこで、放射線透過試験を行うと、破損せずに内部検査が可能です。修理が必要な箇所のみ細やかに修繕できます。ここでは、放射線透過試験について詳しく解説します。ぜひご一読ください。
放射線透過試験の原理と特徴
放射線透過試験では、検査物に放射線を当て内部状況を可視化します。放射線の性質を有効活用した試験方法です。ここでは、放射線透過試験の原理と特徴を解説しています。原理
放射線は、物質を透過する性質があります。また、フィルムを感光させるので、物質内部の撮影が可能です。通常、透過することで放射線量は徐々に少なくなります。しかし、内部が空洞の場合、放射線量は減少しません。そして、空洞は写真上で黒く映ります。外から見えない、傷や混入物を可視化する技術です。これにより、問題の場所やサイズ感が分かりやすくなるでしょう。
特徴
放射線透過試験には4つの特徴があります。1つめに、視覚的な分かりやすさです。フィルムに残るので、修繕案や優先順位が明確になるでしょう。また、小さな検査物でも拡大撮影できるので扱いやすくなります。2つめに、記録に優れている点です。結果をフィルムに残せるので、長期間保存できます。また、フィルムが薄くかさばらないこともメリットです。過去の状況が調べやすいので、修繕に役立ちます。
3つめは、対象素材が豊富なことです。金属・非金属と様々な素材に対応するので、検査物を限定しません。広い業界で臨機応変に活用できます。
4つめに、奥行きのある傷を見つけやすいことです。進行方向の空洞を感知するので、深くまで確認できます。外から気付けない傷に対して、繊細な取り扱いが可能です。
放射線透過試験の活用方法を紹介
放射線透過試験は多くの業界で使われており、利便性の高さが魅力です。ここでは、活用方法と検査方法を紹介します。放射線の種類と活用
放射線には、γ線とX線が存在します。両者はエネルギーが異なるので、必要な透過力を使いましょう。検査物に厚みがある場合、エネルギーが強いγ線が向いています。発電設備・石油化学設備・土木建築など、大規模な設備検査に最適です。また、X線は小型・薄手の検査物に向いています。細かい電子部品を扱う製造業では効果的です。溶接部の気泡や異物巻き込みが発見しやすくなり、精度の高い製造がかなうことでしょう。
放射線透過試験の検査方法
初めに、放射線装置を検査物から離して設置します。50~100cm程度が適切です。そして、フィルムが入ったカセットを検査物に密着させ、放射線を照射させます。照射時間は、検査物の厚み・素材によって異なるので注意しましょう。高度な専門分野のため、慎重な判断が必要です。そして、フィルムを必要な時間露出させ記録を行います。さらに、現像処理には暗室の作業が必要です。
少しでも光が入ると現像できないので、充分な環境を作りましょう。そして、観察器でフィルムを確認します。写真には濃淡の変化があり、黒ずんでいる箇所から破損や傷の判断が可能です。
放射線透過試験を活用する際の注意点
放射線透過試験には、多くのメリットがあります。しかし、状況によっては不便さを感じることでしょう。あらかじめ、注意点を把握したうえで導入することが重要です。時間がかかる
写真になるまでに、時間がかかることがデメリットです。結果を急ぎたい時は、不向きになるでしょう。上手に活用するには、スケジュール立てが必要です。コスト・難易度が高い
検査物の比重により、コスト・難易度が変化します。検査物に比重・厚みがある場合、放射線は透過能力が低下する性質です。検査難易度が高くなるので、特別な処理を行いましょう。放射線装置の電圧を大きくし、遮蔽室での検査が必要です。専門業者に依頼する場合は、コストが追加でかかります。企業によっては、予算オーバーすることもあるでしょう。さらに、特別な処理をしても、検査性能が必ず上がるわけではありません。
詳細が判明しないこともあるので注意が必要です。検査物の比重・厚みを前もって調べておきましょう。また、放射線透過試験の必要性を再度検討することも重要です。