X線検査装置は、電子部品の実装不良や基盤の内部クラック、はんだ接合部の不良といった見た目では確認できない欠損を見つけ出すために不可欠な存在です。検査物の形状や機能を損なわず、ほとんどリアルタイムで内部の解析が可能となっており、品質管理の目的で導入するケースが増えてきています。本記事では、そんなX線検査装置について、仕組みや種類など、くわしく解説していきます。
X線検査装置とは?
X線検査装置とは、物体を透過するX線の性質を利用して内部の構造や欠陥を確認できる装置のことです。非破壊で対象物の内部を観察できるため、製造業や電子部品の分野を中心に幅広く導入されています。肉眼や通常のカメラでは確認できない微細なクラック、はんだの接合不良、異物の混入、内部構造のズレなどを検出できることから、品質管理や信頼性確保に不可欠な存在となっています。そのほかにも、検査品の形状不良や数量不足も検査することができ、幅広い分野で注目を集めています。
とくに半導体やプリント基板の分野では、X線検査装置による確認が製品出荷前の最終工程に組み込まれるケースが多く、精密さと効率性を兼ね備えた装置として高く評価されています。
X線検査装置の仕組み
X線は放射線の一種であり、波長が短く高いエネルギーをもつ電磁波です。物質を透過する性質をもちます。透過率は、物質の原子番号や密度によって変わり、軽い物質は通過しやすく、銀や鉛のような重い金属は通過しにくいのが特徴です。この性質を利用し、対象物にX線を照射して透過物を得るのがX線検査装置です。従来は、X線フィルムに照射像を残す方法が一般的でしたが、現在では高感度の検出器によってリアルタイムで画像化できます。X線がよく透過する部分は黒く、透過しにくい部分は白く表示され、そのコントラストから内部構造や異物の有無を確認できます。
とくに、異物検査においては、対象物全体の透過度と異なる部分を識別し、密度の高い物質を異物として検出します。金属に限らず、ガラスや石、貝殻などの硬質物も発見できる点が、ほかの検査装置にはない大きな強みです。
X線検査装置の種類
X線検査装置は、X線照射の方式によって、いくつかの種類に分けられます。ここでは、主なX線検査装置の種類と特徴を紹介します。シングルビュー型
シングルビュー型は、もっとも一般的なX線検査装置です。1方向から照射したX線を透過像として表示します。構造がシンプルで導入コストも比較的低いため、部品の簡易検査や小規模なラインで広く利用されています。ただし、透過画像は平面的な情報しか得られないため、重なり合った部分の解析や奥行き方向の欠陥確認には限界があります。
マルチビュー型
マルチビュー型は、複数の角度からX線を照射して観察できるタイプです。対象物を回転させながら撮像することで、異なる方向からの情報を取得でき、立体的なイメージを構築できます。これにより、隠れた部分や重なり部分の欠陥を見逃しにくくなり、シングルビュー型に比べて検査精度が高まります。ただし、構造が複雑なため、シングルビュー型よりもコストが高いというデメリットがあります。
CTスキャン型
CTスキャン型は、対象物を細かくスキャンして断層画像を取得し、それをもとに3次元画像を構築する装置です。医療用CTと同様の原理を利用しており、内部構造を立体的に可視化できるのが特徴です。内部の詳細な構造を高精度で観察できるため、医療分野で広く使用されています。ただし、装置は大型であり、比較的高価です。
デュアルエナジー型
デュアルエナジー型は、2種類の異なるエネルギーのX線を利用して検査を行う方式です。物質による吸収特性の違いを利用し、材質ごとの判別や密度差の可視化を可能にします。これにより、従来の透過像では区別が難しかった部分の識別や複数の素材が組み合わさった製品の内部解析が精度高く行えるようになります。とくに、セキュリティや工業分野での異物検査に有効です。高度な解析能力を備わっている一方で、導入コストは高い傾向にあります。
X線検査装置で行える検査の種類
X線検査装置で行うことのできる主な検査を紹介します。いずれも、製造業において、消費者の安全を守るために欠かせません。異物検査
金属やガラス、プラスチックなど、内部に混入した異物を検出するための検査です。透過像から周囲とは異なる密度の物質を識別できるため、異物が存在するかどうかを明確に把握できます。異物検査は、食品の安全管理や製品の品質管理に欠かせない工程であり、X線検査装置の主要な用途のひとつです。
員数検査
部品や実装部品の数を確認する検査です。X線で取得した画像から、パッケージ内の製品数を把握し、正しく装填されているかどうかをチェックします。X線検査装置であれば、透明でない包装でも内容物の数を正確に数えることができるため、効率的な品質管理を実現します。
質量検査
透過度合いを利用して対象物の密度や質量を推定する検査です。製品の質量を非接触で測定することができ、規定範囲内かどうかをチェックします。ボイド検査
ボイドとは、気泡を意味しています。ボイド検査では、製品内部の空洞や欠損部分を検出することで、品質確保につながります。たとえば、食品や医薬品の包装内の空気層や製造過程での不具合による内部の空洞化を発見することができます。形状検査
製品内部の形状を透過像で確認する検査です。包装された状態で、設計どおりの寸法や構造になっているかを確認できるため、効率的な品質管理に役立ちます。充填検査
対象物内部が適切に充填されているかを確認します。気泡や空洞の有無を見極めることで、製品の品質を維持できます。とくに、液体や粉体の製品の場合、重点検査が有効です。X線検査装置を使用するために必要な資格
X線を扱う装置を使用する際には、法令にもとづく安全管理と資格が必要です。国内では、労働安全衛生法にもとづく国家資格のX線作業主任者を取得する必要があります。X線装置を使用する作業場においては、X線作業主任者の選任が義務付けられています。X線作業主任者には受験資格は設けられておらず、誰でも受験することができます。ただし、満18歳未満の方は、合格しても18歳になるまで免許を受け取ることはできません。
合格基準は、各科目4割以上を得点し、かつ4科目の合計点数は6割以上であることと定められています。たとえ、ほかの科目が満点であっても、3問しか合格できなかった科目があったら不合格になります。そのため、合格するには、全科目を満遍なく勉強する必要があります。
合格率は例年50%台で推移しており、それほど難しい試験ではありません。インターネットの普及により、試験対策の情報が手に入りやすくなったことから、合格率は年々上昇しています。
なお、本資格には更新制度はなく、一度合格すれば永久に資格を保持することができます。